「 請 願 書 」

 インド国大統領閣下

 昨年の十一月三日に貴国の下院議院議長、ソムナート・チャッテルジー
氏を団長とする議員団の一行が、京都を観光され、私どもの南禅寺にお見
え下さいました。
 杉村宗務総長がお迎えをして、庭園をご案内いたしましたが、その折り
「南禅寺アピール」というメッセージを議長はじめ議員団一行にお読み申
し上げ、政府ならびに議会にお伝え下さるようお願いしました。
 その後、このことがマスコミを通じて広く日本仏教界に知られるところ
となり、大きな波紋を呼び起こしました。 
 四月十四日には、さらに南禅寺を含む、日本禅宗の双璧の一つ臨済宗・
黄檗宗の十五の団体である臨黄合議所の理事会において、緊急提案がなさ
れました。
 その結果、「ブダガヤ大菩提寺大塔の管理権を仏教徒の手に・・・」とい

 「南禅寺アピール」と同じ趣旨の「臨黄アピール」に各派宗務総長が署
名をいたし、私中村 文峰が日本仏教徒の代表となって、親しく閣下にお
会いして訴えるべく、ここに拝謁を願い出て、参って居るわけでございま
す。
 お願いしたいことは、只一点、「仏教の根本聖地を仏教徒の手に返して頂
きたい」というそのことであります。
 現在、世界では各宗教間の対話が求められ、また進められており、そう
した集まりが日本でも度々、華々しく開かれ、貴国の大使、公使、総領事
も出席されておりますが、世界宗教である仏教の聖地、ブダガヤが法律的
には、先人の努力によって、とうの昔に、裁定によって仏教徒の聖地であ
ると認定されているにもかかわらず、今日までないがしろにされてきたと
いう事実、
 「その宗教の信徒が管理護持出来ないその宗教の聖地へ、その宗教の信
者たちは、世界中から巡礼にやって来る」という奇妙な事実が指摘される
とき、世界の宗教者たちはこのことをどう思うでしょう。
 どうか、一日も早く大菩提寺の問題を解決して頂いて、世界に向かって
五千年の歴史を誇るマハー・バーラト、深遠な宗教哲学を生み出した精神
文化の国として、宗教対話の範を示して頂きたいと思います。
 最後に貴国の平和とご繁栄、閣下のご健康を衷心よりお祈り申し上げま
す。
 平成十七年五月二十三日(仏陀生誕日)
              
            臨済宗南禅寺派管長 中村 文峰
              
                同宗務総長 杉村 五由

               同宗議会議長 中川 昭徳