(アピールを読み上げる杉村総長)
「南禅寺アッピール」

 

今回ソームナート・チャタジー下院議長閣下を団長とするインド国議員団の方々を
当南禅寺にお迎えすることは、誠に名誉なことでございます。

閣下はすでに何度も訪日しておられるそうでございますが今年の京都の秋はいかがでございましょうか。
皆様に日本の行く秋を存分に味わって頂きますれば、我々も幸せでございます。

 さて話は変わりますが、私ども仏教徒の一大聖地はいうまでもなく、
貴国ビハール州、ブッダガヤの大菩提寺であり、金剛宝座と聖菩提樹に象徴されます大塔とその一帯こそ、
世界仏教徒の信仰の拠り所となる聖なる場所であります。

 しかるに歴史的な事情によるとは言え、未だにその管理運営維持が
インド仏教徒自身の手に委ねられていない、という事実を知って、
日本仏教徒のみならず世界の仏教徒は複雑な寂しい思いをしております。

 今日、貴国においても、一九五六年十月十四日、マハラシュトラ州、ナグプールにおいて、
独立インド憲政の父であります、アンベードカル博士によって導かれて、
仏教が復活したことはすでに皆様よくご承知のことであります。
その後継者として日本人僧、インド国籍名アーリヤナーガルジュナ佐々井秀嶺師が
一億人とも言われる現在のインド仏教徒を指導され、
中央政府の要職であるマイノリティー委員会の仏教徒委員であることも
これまた貴国においては周知のことであります。

 その佐々井秀嶺師が数年前より、身命を投げ打って、
大塔の管理権の返還を訴え続けておられる様子は、日本のマスコミでも大きく報道され、
仏教界、一般国民に大きな感動を呼びました。

 日本国民のほとんどは仏教徒であります。私どもが願うところは、
閣下はじめご来日の議員の皆様方の今回のご訪問が大きなきっかけとなって、
この聖地の問題に一層のご理解とご支援をいただきまして、
どうか一日も早くブダガヤ大塔、大菩提寺が本当にインド仏教徒の手に委ねられますことを
日印の友好の真の証として実現して頂くことをお願いいたしまして歓迎の言葉といたします。

それでは美しく穏やかな日本の秋と古い都の文化を十二分にお楽しみください。

平成十六年十一月三日、文化の日

 大本山南禅寺

管長   中村 文峰

宗務総長 杉村 五由
                      宗議会議長 中川 宗徳